平成18年元旦、私は、介護とは縁も所縁もない全くの異業種から、この世界に初めて参加させて頂くことになります。

それまで金融、不動産、人材紹介、コンサルティング等と言った仕事をしていた私にとって、この年は正に人生の大転換期でした。

私が最初に参加させて頂いた介護事業所は、定員50人の大規模デイサービスでした。当時、介護の「か」の字も知らなかった私にとっては、そこでの経験は感動の連続としか表現のしようのない毎日でした。

何に感動したのか?…それは当時の職員の皆さんの働きぶりに対してでした。
お風呂での介助、食事の介助、トイレでのお世話、認知症の方に対する接し方…いわゆる「3K」と呼ばれる仕事の代表と言われていた仕事です。
 しかもまったくのアカの他人に対してニコニコしながら何のためらいもなくやってのける皆さんの働きぶりに、私はただただ感動したのです。

 そのような中で、介護経験が豊富で、後々私の介護における師匠とも呼べる先輩職員がつぶやいた一言が、現在の私の介護に対する全ての指針になっています。

「これだけ利用者の方の人数が多いと、お見えになられてからお帰りになるまで1回も顔を見ることもなく、ましてやお話をする機会も全くない方が何人もいらっしゃいます。せめてその日にお見えになられた‘皆さん全員と’,お顔を見て一言でもいいからお話ししたいですよね。」というものでした。

 私も全く同感でした。

 朝から夕方までの「シフト」に組み込まれた分刻みの忙しさの中で、どうすれば利用者の‘皆さん全員と’お話しすることができるか?  答えは一つ…「朝、皆さんがご到着になった後のくつろぎの時間に、お一人お一人に‘おはようございます!’とごあいさつに回ること」…でした。
 1週間、1か月そして3か月と毎朝毎朝、とにかく利用者の皆さん全員に「おはようございます!」と、お一人お一人へのお声掛けを続けたのです。

すると興味深い現象が起き始めたのです。
 それまでほとんど口をきいて頂けなかったのに、はにかみながら「おはよう」と言って下さったおじいちゃん…  私がご挨拶に回る順番を待ちきれずに、「早く来てよ!」と催促するおばあちゃん…  「あんな偉い人に挨拶なんかされて恐縮で恐縮で…」と、嬉しそうに職員に話されるおばあちゃん(偉くも何ともないのですが)…

たったこれだけの行動によって、面白いことに利用者の方々ご本人だけでなく、そのご家族からも嬉しい反響が寄せられるようになったのです。
皆さんとの距離が急に近くに感じられ、私自身が朝のご挨拶回りが楽しみで楽しみで仕方なくなってしまったのです。どのおじいちゃんも、どのおばあちゃんも、私から、そして職員から声をかけてくれるのを待っていてくれている…

 その時の私が身を以て体験させて頂いたこと、
「利用者の皆さんお一人お一人への面と向ったお手伝い」…これが私の起業の原点です。

「株式会社 一面堂」は、『ひとりひとりにむきあう』を企業理念に、
  ○ 車いすなんか要らない!
  ○ 絶対に寝たきりなんかにはさせない!
を信条として、真心を持ったお手伝いをさせて頂きます。

代表取締役 一面俊明